当社ではフリーランスのカメラマンに業務委託をして報酬をお支払する約束をしました。
委託料などのお約束はしましたが、源泉税についてのお話はしませんでした。
送付された請求書を見ると、源泉税は記載がありません。
これは源泉税を取る必要がありますか?また、勝手に取っても罰則はありませんか?
イマイチ仕組みがわかりにくい源泉税についての質問です。企業が個人とやり取りすることはいくらでもあることで、フリーランスのカメラマンさん相手に経理関係のやり取りをしなくてはならないケースは源泉税が付き物です。
10万円の報酬に対して源泉税は1万円以上発生します。請求書に書かれていない源泉税を勝手に取るのは抵抗があるものです。こちらの質問に当サイト現役経理マンライターがお答えします。
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源泉税って何?どんなときに発生する?
フリーランス(個人事業主)に特定業務に関する報酬を支払う際、源泉税を預かります。
源泉税徴収対象となる報酬は以下のようなものです。
弁護士、公認会計士、司法書士、社労士、スポーツ選手、モデル、外交員、出演料、原稿料、講演料、デザイン、作曲等
詳しくは、国税庁ホームページをご確認ください。
経理担当者としては源泉税についてはしっかり理解しておきましょう。
フリーランスカメラマンの報酬は源泉徴収対象になる?
「雑誌、広告その他の印刷物に掲載するための報酬若しくは料金」は源泉徴収対象です。
企業の取引でカメラマンに写真撮影を外注するケースの大半は該当するのではないでしょうか。
パンフレットや雑誌広告などの紙面に印刷する写真の場合は間違いなく源泉税徴収が必要です。一方、企業ホームページやWEB広告は「印刷物」には該当しませんのでグレーゾーンです。しかし、WEB掲載するものは広告物の意味合いが強い為、源泉徴収しておくことが無難と考えます。
請求書を見れば源泉税対象に気付ける?
請求書に個人名義の口座の記載あれば、源泉税対象かも?と気付けます。
「株式会社—」や「合同会社—」のようなわかりやすい社名なら、源泉税の対象外です。
わかりにくいのは、完全なる個人事業主であっても屋号は別名の会社っぽい名前を付けることは自由です。(もちろん株式会社や合同会社などの表記はNG)
このケースであれば、請求書の口座が個人名かどうかが源泉税対象か否かのわかりやすい基準となります。
フリーランスは源泉税のことを理解している?
必ず知っているはずです。
仕事を始めたばかりのフリーランスや報酬対象となる業務を初めて請負うなどのイレギュラーパターンを除き、源泉税が差し引かれて報酬振込があることは理解しているはずです。
請求書についても、フリーランス用のフォーマットを使用していることが多く源泉税計算をしてくれていることが多いです。
しかし、フリーランス側で請求書に源泉税を記載する義務はありません。
いくら請求書に記載がなくても、企業が源泉税計算して預かり、納付する義務があります。
何故請求書に源泉税を記載してくれないの?
フリーランス同士の取引では源泉税記載不要だからです。
あくまで、企業がフリーランスと取引した際に企業側で源泉税を預かる義務が生じます。一方、フリーランス同士では義務が生じません。
フリーランス側からすると、取引相手ごとにフォーマットを変えて源泉税まで計算するのは面倒な為、記載せずに「勝手に取って!」のスタンスのほうが楽なのです。
源泉税は勝手に取っても良い?連絡したほうが良い?
特に連絡する必要はないでしょう。
源泉税を預かることは法律で決まっています。会社員が給料をもらう際に事業主から事前に所得税の金額を聞かないように、フリーランスも同様の対応で良いと思います。大抵のフリーランスは源泉税のことを知っている為、トラブルにはなりません。連絡の手間を考えると省いて良いと思います。
勝手に源泉税を預かると、たまに連絡が来ることがあります。その際は源泉税の金額をお伝えすればトラブルになることはないでしょう。
請求書に記載のない源泉税を勝手に預かることに罰則はありませんのでご安心ください。
源泉徴収をしなかったら罰則はある?
徴収しなかった側の企業に不納付加算税・延滞税がかかります。
フリーランスカメラマン側には罰則はありません。
つまり、請求書に書いていようがいまいが責任を持つのは企業なのです。
たとえ「勝手に」でも源泉税は取らないと罰則を受けることとなります。
フリーランスカメラマンは源泉税について詳しい?
大抵は詳しくはありません。
フリーランスで報酬を支払う人は、カメラマンに限らずある種の手に職を持った職人さんです。大抵は1人で仕事をしている為、経理知識を習得する機会はありません。
カメラマンとしての仕事のことは熟知していても、経理については詳しくない人が多いです。
それでも、確定申告は自分自身で行わなければならない為、勉強する人はしっかりと知識を持っています。
源泉税でトラブルになることはある?
基本的にはありません。
こればかりは法律が勝つので何ともならないところです。他社の経理担当と話をするのとは違い、理解してもらうのに時間がかかるケースはあります。しかし、ここは絶対に伝えなければなりません。不正会計をしない為です。
それでも理解してくれないカメラマンさんとは、いくら腕が良くても取引するべきではありません。
フリーランスカメラマンが法人成り。源泉税は?
源泉税は必要なくなります。
フリーランスで一定の収益が出ると、節税の為に法人成り(法人格を取得すること)することもあります。この場合、たとえカメラマンが個人で活動していることに変わりなくても源泉税が必要なくなります。
一般的に法人格取得と共に口座名義も変更します。請求書の差出人名や口座名義が法人名に変わっている場合は、源泉税を預かる必要がありません。もしフリーランスカメラマンが知らずに源泉税計算した請求書を送ってきたら誤っている可能性が高いです。カメラマンさんに直接聞いてみましょう。
源泉税についてわからないときはどうする?
顧問税理士や税務署に相談してみましょう。
会社と顧問契約している税理士や会計士がいるのならまずは相談してみましょう。
もしくは税務署でも相談に乗って貰えます。源泉税の徴収漏れは脱税行為です。取引相手がフリーランスとはいえ、脱税行為は許されるものではありません。きちんと専門家に相談しましょう。
(ライター:Takahashi Shuta)