言い方は良くないですが、経理の仕事はどこの会社も似たような仕事内容です。
その分、ひとつの会社の経理部門でそれなりに実務経験を積み決算業務や税金申告などの業務が出来るようになれば他社の経理に転職しやすい職種です。だからこそ経理経験者の転職は、経理部専任として応募することが圧倒的に多いのです。
経理から経理への転職。面接で誰しもが悩むのは志望動機。
どこの会社も似たような仕事内容だからこそ、経理部の志望動機を考えるのは非常に難しいのです。
当記事は元経理マンの転職エージェント現役キャリアアドバイザーが執筆します。
悩み多い経理職の転職面接で語るべき志望動機についてまとめます。
Contents
本音を言うと、経理から経理の転職の志望動機なんて「年収アップ」か「残業時間」
営業マンのように「御社の商品に魅了され、売上に貢献したい!」とか「マーケット拡大を進めていきたい!」みたいなポジティブで熱い想いを持った志望動機なんて経理部にはありません。
現在経理部で働いている人があえて別の会社の経理部に転職しようとしているのは、こんな理由があるはずです。
・年収アップをしたいから。
・ボーナスをもっと欲しいから。
・残業時間を減らしたいから。
・連休を取りたいから。
・有給取得をしたいから。
・今の会社の人間関係が嫌だから。
・今の会社で出世できそうにないから。
・家から通いやすい職場に転職したいから。
・転勤のない会社に転職したいから。
これらはキャリアアドバイザーの私が転職者に聞いた本音です。
簡単に言えば「ラクして高い給料が欲しい」と考えて転職します。
でもこの本音、経理マンとしては実に正しい考え方だと思います。デキる経理マンならどうすれば会社のお金が増えるかを考え、どうしたら仕事が効率化するかを常に考えています。自分自身のお金をどう増やし、いかに残業時間を減らせるのかを考えるのも当然のことです。
とはいえ、転職面接で本音をさらけ出すのは賢明ではありません。
経理経験者の転職は何を求められているかを考えましょう。
会社が経理経験者の中途採用を受け入れるのは即戦力が欲しいから。戦力になるかの判断材料は以下のとおり。
・経理実務経験年数
・経理実務経験内容(決算、税務、財務、予算編成など)
・会計に関する資格
正直なところ、志望動機は二の次です。とはいえ、採用・不採用を判断するのは面接官です。
「この人と一緒に働きたくないなぁ。」とか、「他のメンバーと上手くやっていけるかなぁ。」なんて思われてしまえば不採用です。履歴書や職務経歴書ではわからない人柄は見られています。いくら経理実務経験や知識があっても、謙虚な姿勢を貫くことが大切です。
本音と建前を上手く使い分けて志望動機を伝えるチカラを面接官は見ています。
簿記などの会計資格もアピール材料に!
経理は実務経験が大切と言いますが、経理の転職こそ資格が大切という考え方もあります。
実務経験はいくらでも嘘や誤魔化しが効きます。それに引き換え、資格は嘘や誤魔化しが効かない上、誰が見ても同じ評価となります。
最も大切な実務経験をアピールすることは勿論ですが、日商簿記などの会計資格があればさらに有利と考えると良いでしょう。
経理という職種は勉強し続けることが必要な仕事です。会計資格取得は勉強し続ける姿勢のアピールにもなります。
経理部の志望動機はポジティブな理由を!
転職先を選ぶ2つの軸があります。それば、「職種」と「会社」です。
職種は経理ですから、いかに経理の仕事が好きで活躍できるポテンシャルを持っているかを志望動機としてポジティブにアピールすることが大切です。
「現職でも経理の仕事をしている中、国際会計にも興味が沸いてBATICの勉強をはじめました。現職では海外取引がなく、グローバル展開が進む御社で知識を活かしていきたいです。」
同じ経理でも現職では出来なかったことを転職で実現したい!というポジティブな志望動機は好印象です。
難しいのは会社の志望動機。何故この会社の経理部を志望するのか。
どこの会社の経理部も似たような仕事をしているにも関わらず、何故この会社への転職を選んだのかをポジティブにアピールしましょう。
「御社の商品を愛用している中で、どんな会社なのか興味が沸いて調べました。会社の経営戦略の素晴らしさに惹かれ、この会社で働きたいと思いました。私は経理部出身で、お金の面から会社を支えることで貢献できると考え志望します。」
もう少し具体的なエピソードがあればなお良いです。会社の商品や事業内容に関心を持った上で、自分に何ができるかをアピールする志望動機となっています。本音と建前を上手く使いわけることもビジネスマン・経理マンとして大切なスキルです。
やはり、給料や残業時間を志望動機にするのはダメ?
本音が給料や残業時間であっても、志望動機ではこんなワードを出すのはNGです。
あくまで「経理としてどんな仕事をしたいか。」を志望動機にしましょう。
ただし、面接官の方から給料や残業時間の話題に触れてきた場合にはしっかりと希望を伝え、聞きたいことは聞いておきましょう。
新卒採用と違い、中途採用は交渉の場です。肝心な採用条件を確認しておくことは大人として基本です。
「現職の給料が低すぎるから転職したい」とか「残業時間が多く休日出勤も多いから転職したい」という現職を悪く言うようなことはなるべく言わないほうが好印象でしょう。経理経験者の転職であれば最低でも年収500万円以上は狙いたいところです。
同じ経理でも「ステップアップしたい!」ということを志望動機にしよう。
先述した志望動機例だけではありません。
経理としてステップアップする場合には以下のような志望動機があります。
・グローバル展開に携わりたい。
・中小企業の経理経験を活かして大企業の経理をしたい。
・連結決算を経験したい。
・会計だけでなく財務・税務に携わりたい。
・経営計画に携わりたい。
これらの業務が現職では叶わないから、転職して別会社の経理で働きたいと考えるのはポジティブで素晴らしいです。
経理マンとしての向上心を評価されるでしょう。
面接官によって志望動機のスタンスを変えよう。
転職面接で面接官を担当するのは主に人事部の採用担当者、同じ部署で働く経理部メンバー・上司、そして最終面接では社長・役員となります。それぞれの面接官では視点が異なるので上手くつかいわけましょう。
人事部の面接官 → 会社が求める人物像に合わせ、自身の仕事への考え方を交えて話す。
経理部の面接官 → 経理実務経験や担当したい業務を交えて話す。
社長・役員の面接官 → 会社・業界のビジョンを交えて話す。
ざっくり言うとこのようにスタンスを変えていくと良いでしょう。社長に経理業務の細かい話をしても伝わりませんが、逆に経理メンバーは細かい実務の話を聞きたがります。面接官にアピールするには、相手の欲しい情報を察知して使いわけることがポイントです。
これは経理マンがビジネスシーンで必要なスキルです。たとえば決算状況を伝える際に相手の役職や部署によって伝え方を変えて話すのと同様です。
では、もう少し具体的な回答例をまとめます。
「社員のアイデアからヒット商品を生み続けている社風の良い御社の一員として経理の仕事をしたいです。」
「御社の経理部は経営計画にも携わる重要なポジションと拝見しました。これまでの経理の経験を活かし、会社の利益に貢献できる経理部員として活躍したいです。」
「御社の経営理念の『何でもチャレンジ』が私の人生におけるモットーと親しく、今までにも沢山のチャレンジをしてきました。御社でもチャレンジ精神を持って経理の仕事をしていきたいです。」
勿論、志望動機の軸が面接官によってブレてはいけません。
しかし、面接官によってこんなワードも取り入れて志望動機をアレンジしていくとさらに好印象となるでしょう。
面接官への質問も使いわけて用意しておこう。
志望動機同様、質問の用意も忘れずに。
面接の最後には面接官より「何か質問はありますか?」と逆質問を受けます。
この時にも面接官が喜んで話してくれる質問を用意しておきましょう。
人事部の面接官であれば、組織についてや人事制度について。
経理部の面接官であれば、経理実務についてや財務状況について。
社長・役員であれば、会社の戦略や歴史について。
使いわけて質問を用意しておくことで、デキる経理部員をアピールできるでしょう。
【まとめ】経理から経理の志望動機づくりのポイント
経理から経理への志望動機はさほど重要ではないものの、やはりきちんと準備すべきです。
面接官も本音は「給料」や「待遇」と知りながらも、うまく建前を語れるかどうかを見ています。建前づくりも仕事がデキる条件のひとつですから。志望動機づくりのポイントをまとめます。
・経理での実務経験をアピールすること。
・志望動機はポジティブに伝えること。
・経理としてステップアップしたいと伝えること。
・年収や残業時間の話題は面接官に聞かれるまでは触れないこと。
・現職を悪く言うことは避けること。
・会社の志望動機と経理職の志望動機を混ぜること。
・面接官によって志望動機を変えること。
しっかりとポイントを抑えて志望動機を伝えましょう。
準備を徹底することで希望する企業から内定を貰える可能性は高くなるでしょう。
(ライター:Kitagawa Mai)