「IPO準備中の会社に経理として転職したのは大きなチャンスだと思っていました。
上場準備の経験なんて滅多に積めないし、キャリアアップには最高の環境だと。」
そう語るのは、30代でIPO準備企業の経理部門に転職したBさん。
しかし、実際に働き始めると想像以上にハードな日々が待っていました。
決算のスピードは今まで以上に求められ、監査法人からの厳しい指摘に対応しながら、内部統制や開示資料の整備まで幅広い業務をこなさなければならない…。
「正直、激務すぎて体力的にも精神的にもキツかった」と振り返ります。
一方で、Bさんは同時にこうも話します。
「大変だったけど、IPO経理の経験を積んだことで転職市場での評価は確実に上がった。ストックオプションも支給され、報われた部分もあった。」
本記事では、Bさんの体験談をベースにしながら、IPO準備会社の経理が直面するリアルな実態とキャリア価値について解説します。
Contents
IPO準備会社の経理は一体なぜ激務になるのか
Bさんがまず衝撃を受けたのは「仕事の量とスピード感」です。
通常の月次決算や四半期決算だけでなく、IPO準備では以下のような追加タスクが発生します。
- 監査法人からの資料請求や質問対応
- 内部統制(J-SOX)の整備と運用
- 開示資料(有価証券報告書や目論見書)のドラフト作成
- 株主や投資家向けの説明資料作成
Bさんはこう話します。
「通常業務に加えて、監査法人からの質問に毎日のように追われ、まるで終わりのない宿題をやっているような気分でした。
残業は月80時間を超えることも珍しくなかったです。
また、以下のような構造からも激務になりやすい傾向があります。
- 締め切りが絶対的
証券取引所への上場審査や、有価証券報告書の提出期限は動かせない。 - 関係者が多い
証券会社・監査法人・弁護士・証券取引所など、複数の外部機関と調整が必要。 - 業務が初めて尽くし
会社として初めて行う業務が多く、ノウハウがなく試行錯誤になる。
IPO準備企業の経理は、決算処理の正確さに加えて“スピード”と“説明責任”が求められるため、激務になりがちなのです。
普通の会社の経理とIPO経理の違い
Bさんは前職で中堅企業の経理を担当していました。
いわゆる「普通の会社の経理職」です。
その経験と比較して、IPO準備の経理には次のような違いを感じたと言います。
- 仕事の幅が圧倒的に広い
「前職では仕訳や決算書の作成が中心でしたが、IPO準備では内部統制の構築や監査対応、さらには経営層との打ち合わせにも参加する必要がありました。」 - 会社全体を巻き込む仕事が多い
「営業部門や人事部門に依頼してデータを揃える必要があり、コミュニケーション力も試されました。」 - 経営企画との距離が近い
「IPOは会社全体の一大プロジェクト。経理だけで完結せず、経営企画や法務とも一緒に動きます。数字を作るだけの経理とは全く違いました。」
普通の経理が“守りの仕事”だとすると、IPO経理は“攻めの仕事”の色合いが強いのです。
なぜIPO経理は激務になりがち?サービス残業は?
Bさんは「サービス残業が暗黙の了解になっている部分もあった」と話します。
IPO準備はスケジュールが株式上場に直結するため、期限の延長が難しいのです。
「監査法人から指摘された内容を直すのは、どれだけ時間がかかっても翌日までに仕上げなければならない。だから帰る選択肢がなかったんです。」
ただし、すべてのIPO準備企業がブラックではありません。
Bさんの知り合いで、IPO準備中でも残業が少なく、チームワークでうまく回っていた会社もあります。
要は、会社のカルチャーや管理職のマネジメント次第なのです。
IPO経理のメリットは?ストックオプションはもらえる?
IPO経理は非常にハードですが、その分メリットも大きいとBさんは強調します。
以下、Bさんが感じたIPO経理のメリットに関するコメントです。
- 市場価値が高まる
「転職活動では“IPO準備経験あり”の一言でスカウトが一気に増えました。未経験者と比べて評価が段違いでした。」 - ストックオプションの付与
「上場成功と同時にストックオプションをもらえたのは大きかったです。金額に換算すると年収の数百万円分の価値になりました。」 - 経営に近い経験が積める
「CFOや社長と直接議論する機会があり、普通の経理では味わえないやりがいを感じました。」特にストックオプションはIPO経理の大きなメリットです。
BさんもIPO準備会社に転職した際にストックオプションを付与されました。
上場時の株価上昇で、最終的に<strong>1,000万円以上の利益</strong>を得られたそうです。「当時は激務で家族にも迷惑をかけたけれど、会社の成長とともに自分の資産も増えたことは大きなモチベーションになった」と振り返っています。
このように、IPO経理はキャリアだけでなく、経済的なリターンを得られるチャンスがあるのが特徴です。
【体験談】激務で心身を壊してしまったIPO経理の現実
一方で、IPO準備の激務に耐えきれず、体調を崩してしまうケースもご紹介します。
ある20代後半の経理担当者Cさんは、IPO準備で深夜残業が続き、睡眠時間は毎日3〜4時間。
結果的にうつ症状が出てしまい、退職を余儀なくされました。
「スキルは確実に身についたけれど、心身を犠牲にしてまで働くべきではなかった」と語っています。
この体験からわかるのは、IPO経理のキャリアは価値が高いものの、自分の体力・メンタルの限界を見極めることも重要だという点です。
IPO経理経験者の転職市場でのキャリア価値
IPO経理の経験を積んだことで、Bさんは次のようなキャリアの選択肢を得ました。
・上場企業の経理部門への転職
・コンサルティングファーム(会計系)への転職
・CFO候補としてベンチャーからのオファー
「激務で辞めたいと思ったこともありましたが、キャリアの幅が一気に広がったのは間違いないです」と語ります。
IPO経理は一度は経験しておくことは悪くないようです。
まとめ:IPO経理は激務。でもリターンも大きい!
IPO準備会社の経理は確かに激務です。
Bさんのように「こんなに大変だとは思わなかった」と後悔する人も少なくありません。
一方で、ストックオプションやキャリア価値という大きなリターンもあります。
以下に当てはまる人はIPO経理に向いている人と言えるでしょう。
・成長環境で短期間でスキルを伸ばしたい人
・ハードワークをある程度いとわない人
・細かいチェックと同時に、外部対応もできるバランス感覚のある人
・将来的にCFOや経営企画を目指す人
IPO経理に挑戦するかどうかは、体力的・精神的な負担と将来のキャリアメリットを天秤にかけて判断することが重要です。