経理コラム

「決算早期化しろ」は簡単に言うけど…現場の苦悩を知らない人に読んでほしい話

「決算早期化しろ」は簡単に言うけど…現場の苦悩を知らない人に読んでほしい話

決算早期化――経営層や親会社、株主からは「もっと早く数字を出せ」と言われがちなテーマです。確かに、投資判断や経営戦略のスピードを上げるには、決算が早いに越したことはありません。しかし、現場の経理担当者にとっては、この一言が胃に穴が開きそうなプレッシャーとなることもあります。

「決算早期化しろ」は、魔法の呪文ではない

経営会議でサラッと口にされる「決算早期化しろ」。でも現場からすると、「今でも限界まで頑張ってるのに、さらに早く?」という気持ちになります。 決算は単なる数字の集計ではなく、売上・費用・在庫・減価償却・引当金…と、あらゆるデータを正確に集めて検証する作業。これらの工程は単純短縮できない部分も多いのです。

ボトルネックは経理部だけじゃない

「決算が遅い=経理部のせい」と思われがちですが、実際には各部署からの情報提供スピードも大きく影響します。 営業部が売上確定データを締め切りギリギリで出す、購買部が請求書の仕分けを遅らせる…こうした遅れがドミノ倒しのように経理部に負荷をかけます。 決算早期化は全社的な協力体制があって初めて成立するものであり、決算早期化によって社内全体に大きな負荷がかかるということになります。

人員不足とシステム限界のダブルパンチ

経理現場でよくあるのが「人員は増えないけど期限は短くなる」という状況。 さらに古い会計システムや非効率なExcel集計に依存している場合、業務効率化どころかミスリスクが増大します。 現場は「早く」「正確に」という二律背反の要求に日々さらされているのです。

決算早期化ために犠牲になるもの

期限を優先するあまり、分析や数字の裏取りが浅くなるリスクがあります。 「とりあえず数字を出したけど、後から修正だらけ」という事態は、結局経営判断の質を下げてしまいます。 スピードは大切ですが、精度とのバランスを欠くと本末転倒です。

それでも決算早期化を実現するために現場がやっている工夫

  • 月次決算の精度を高め、四半期や年次に備える
  • 他部署への締め日教育と協力要請
  • 仕訳や帳票処理の自動化ツール導入
  • 不要な手作業やチェック工程の見直し

こうした改善は一朝一夕では成果が出ませんが、地道な積み重ねで数日単位の短縮が可能になります。

決算早期化は「現場目線の改善策」とセットで語るべき

経営層が「決算早期化しろ」と言うだけでは、現場は疲弊する一方です。 大切なのは、現場の業務フローを理解し、改善策を一緒に考える姿勢。 例えばシステム刷新の予算を確保する、繁忙期の残業規制を緩和する、他部署を巻き込んだ全社的プロジェクト化するなど、経営と現場が一体で取り組むことが成功のカギです。

【まとめ】決算早期化は簡単なことではない。

「決算早期化しろ」という一言の裏には、現場の血と汗と涙があります。 もしあなたが経営層や他部署の立場なら、ただの指示ではなく、現場が動きやすくなるための環境整備も一緒に考えてみてください。 決算早期化は、数字だけの話ではなく会社全体の文化と仕組みを変える挑戦なのです。