出向って“左遷”かと思っていたけど…実はもっと複雑だった…
親会社から子会社に出向すると聞いたとき、正直ショックだった。
「待遇は下がるし、仕事は増えるし、なんか負け組みっぽい…」そんな覚悟をしていた。
ところが、実際に子会社へ出向した初日、待っていたのはまさかの展開。
「〇〇さん、今日からよろしくお願いします!」「わざわざ来ていただいてありがとうございます!」「お仕事色々勉強させてください!」
…いやいや、ここで働く社員なんだけど!?出向とはいえ、むしろここでは新入社員なんだけど!?
この“お客様扱い”が、むしろキツかった—。これは、僕が経験した「親会社 → 子会社出向」のリアルな物語だ。
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親会社から子会社への出向は“優遇”ではなく“距離感の証拠”
子会社に行くと、なぜかやたら丁寧に扱われる。
席もあらかじめ整えられていて、社内案内も手厚く、飲み物まで準備されていたりする。
一見すると歓迎ムードだが、実はこれ 良い意味の優遇ではない。
正確には…
「親会社の人だから粗相があってはならない」
「本音を探られたくない」
「評価に関わるから慎重に接しよう」
こうした “距離感” が丁寧さの正体だ。その結果、最初の1〜2週間はこんな状態になる。
- 何も仕事を頼まれない
- 会議でも発言しづらい
- 雑談には入れない
むしろ“観察されている”感覚が強いつまり歓迎されているようで、実は 孤立している。
僕がいないほうが活発な会議ができるのでは?邪魔者なのでは?どんな感覚に陥っていた。
本当は伝えられない“子会社側の本音”とは?
これは、後から子会社プロパーの社員に飲みの席で言われて気づいたことだ。
「最初は正直、警戒してたんですよね」
「出向の人って、私らの評価とか見てるのかなって…」
要するに、プロパー社員からすると出向者は…
「親会社に報告を上げる人」
「評価を下す立場の人」
「自分の仕事の粗を見られる人」
…だと思われている。実際は全然違うのに。
だから、最初から砕けたコミュニケーションは成立しないし、距離が縮まるのにも時間がかかる。
そしてもう一つの本音がこれ。
「どうせ数年で親会社に帰るんですよね?」
出向者は “どうせいなくなる人” と見られやすい。これが、深い信頼関係を作りにくい最大の理由なのである。
仕事は“お客様扱い”なのに、責任は重いという矛盾
出向直後は表面上の待遇が良くても、
実務が始まると 責任だけは激重 という矛盾が襲ってくる。
- 間違いなく親会社との窓口担当になる。
- トラブル時は真っ先に呼ばれる
- 子会社と親会社の意向調整役を任される
「現状を改善してほしい」というプレッシャーを受ける
特にきついのはこれ。
「親会社の方なら分かりますよね?」
…いや、僕だって現場の情報ゼロで来てるんですが?
表面の丁寧さとは裏腹に、
出向者は“親会社の知恵袋”として扱われ、成果を求められる。
慣れるまでの数ヶ月は精神的にかなり負荷がかかる。
出向して初めて知った、子会社側の“年収格差”への複雑な感情
これはほぼ全員が感じることだが、
子会社プロパーは 親会社との待遇差をよくわかっている。
決して表立って文句は言わないが…
「賞与何ヶ月なんだろう」
「福利厚生はやっぱり違う」
「同じ仕事してるのに…」
こうした空気は出向者にも伝わる。
自分は悪くないのに、妙な申し訳なさを感じてしまう。
だから給与や賞与の話は子会社プロパー社員の前では絶対にしない。
生活水準がわかってしまうような休日の過ごし方や買い物の話も決して迂闊にできない。
そしてプロパー社員からこんなセリフが出ると刺さる。
「〇〇さんは親会社に戻れるんですよね」
嫉妬というより、“戻れない側” の現実との比較から来る、切ない感じだ。
コミュニケーションは“壁”を作らない人が圧倒的にうまくいく
僕の経験上、子会社出向で上手くいく人は共通点がある。
- 自分を大きく見せようとしない
→「わからないので教えてください」が言える人は好かれる - 子会社のルールに合わせようとする
→「親会社はこうだから」は絶対NGワード - 余計な情報を持ち帰らない
→「スパイ扱いの誤解」を招かない - 感謝やリスペクトをしっかり伝える
→「助かります」「すごいですね」が効く
親会社と子会社は“文化が違う”ため、
距離感をゼロから丁寧に埋めていくのが成功の鍵だ。
出向で得た最大のメリット:仕事の幅が一気に広がる
出向にはネガティブイメージも多いが、キャリアの伸びしろは本当に大きい。
- 子会社の経営に深く入り込める
- 親会社側には見えない“現場の意思決定”がわかる
- 組織の文化の違いを学べる
- プレゼンスが高まり、戻ったときに昇進しやすくなる
特に大きかったのは、「親会社の仕事がめちゃくちゃラクに見えるようになること」
これは本当に大きい。
出向を経験した上司ほど、社内評価が跳ね上がっているのも納得できる。
まとめ:出向は“しんどいけど最強のキャリア修行”
親会社から子会社への出向は…
✔ お客様扱いで気まずい
✔ 距離感もある
✔ 責任だけ重い
✔ 年収差の空気が怖い
…という現実が確かにある。
✔ 人間関係スキルが爆上がり
✔ 経営の現場感が身につく
✔ 親会社に戻ったとき評価される
✔ 親会社にずっといるだけではわからない視点が身につく
✔ どこでも通用するタフさ・順応性がつく
という 圧倒的メリット が残る。
“出向はキャリアを強くするイベント”これは間違いない。

