「この会社で役員になれるのは、結局“親会社から出向で来た人”ばかりだな…」
経営企画部に所属するBさん(40代・子会社プロパー社員)は、ため息を漏らしました。
20年以上勤め、社内では一目置かれる存在になったものの、管理職以上のポストはことごとく親会社からの出向者で埋まっている。どんなに頑張っても“天井”がある現実に、虚しさを感じることが増えていったのです。
いくら管理職のポストが空いても、会社のことや仕事のことを熟知しているプロパーがポストに就くことはなく、親会社出向者という無限に存在する見たこともない人間達によってポストが埋まっていく…そんな厳しい子会社プロパー社員の現実について体験談を綴ります。
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大企業の子会社は、経営陣を親会社で固めるのが常識
Bさんが働く子会社の役員人事は、ほとんどが親会社主導で決まります。
社長・取締役・本部長クラスは例外なく親会社からの出向者。
当然親会社の人事は子会社プロパー社員が普段働いている姿を見ることはありません。
「結局、経営は親会社が握っているから、俺たち子会社プロパー社員にはチャンスなんてないんだよな」
先輩社員が口にした言葉に、最初は違和感を覚えたBさんも、長く勤めるうちに現実を受け入れざるを得なくなりました。
確かに親会社があってこその子会社。親会社の資金や力なしには子会社は存続できないのはわかっている。
とはいえ、人事の理不尽さを感じてしまい子会社プロパー社員は頑張っていくモチベーションが消え失せてしまいます。
そして、「どうせ仕方のないこと」と諦めてふてくされながら仕事をしていくこととなるのです。
管理職ポジションも“親会社優先”の壁
Bさんは課長職まで昇進しましたが、その先の部長ポジションはほとんどが親会社出向者です。
人事評価でも「親会社とのパイプの太さ」が重視されるため、プロパーは能力だけでは勝負できない構造になっています。
「どんなに成果を出しても、親会社から出向する人に勝てない」 そんな閉塞感が社内全体に漂っていました。
部長職で大切なのは自身が成果を出すことより上からの承認を得るように上手く根回しすること。
上の人とは、役員や親会社のこと。ここに顔を効かせられるのは当然にして親会社出向社員のコネクションあってこそ。
こういった背景からも部長以上の管理職ポストは親会社出向者で埋められていくのです…
親会社から子会社に出向すると役職が上がる現実
親会社の部長が出向して子会社部長になるわけではありません。
親会社から子会社に出向すると役職が上がります。
出向前に親会社で課長や係長クラスだった人が子会社に出向後に部長職に上がります。
そしてこれは昇進というわけではありません。
何故なら、親会社のほうが子会社よりも遥かに年収が高く給与テーブルに違いがあるからです。
子会社部長の年収は親会社の課長や係長クラスの為、給与テーブルを合わせるためには役職を上げて出向させないと辻褄が合わなくなるからです。
子会社プロパーが出世できない3つの理由
Bさんが感じた“見えない天井”の理由は、構造的に存在しています。
– 経営方針や人事権は親会社が握っている –
主要ポストは「信頼できる親会社社員」で固められる。
子会社は“親会社社員の育成の場”として位置づけられることも多いのが現実です。
つまり、子会社プロパー社員は「いくら優秀でもポストが回ってこない」という仕組みに組み込まれてしまっているのです。
子会社プロパー社員が出世するのは目に見えて成果が出た場合ですが、手柄は上司である親会社出向社員に取られていくことが多いです。
それでも昇進できた子会社プロパー社員の共通点
これだけ厳しい現実があっても、昇進する子会社プロパー社員はゼロではありません。
Bさんの先輩で、子会社プロパーから本部長にまで昇進した人もいました。
その人に共通していたのは…
– 親会社からも認められる専門スキルを持っていた –
グループ全体全体に利益をもたらすプロジェクトで成果を残したことや、語学力や資格など、親会社社員にはない強みを示せた人は出世できます。
「この人は親会社の社員でも代わりが効かない」
そう思わせることが、子会社プロパー社員が昇進するための数少ない突破口だったのです。
子会社の重要プロジェクトは、親会社からすると金額規模の桁が遥かに小さいことも多いです。
親会社で認識する重要プロジェクトが100億円規模で、子会社の認識する重要プロジェクトは1億円だとすると…
子会社のプロジェクトで1億円目標のところ、倍の2億円の売上を達成したとしても…
金額規模が小さすぎて親会社の経営会議ではトピックスにもならないケースもあるのです。
これはどんなに頑張っても子会社が報われない厳しい現実の一例です。
子会社に留まるか、外に出るかの選択
Bさんも40代に入り、キャリアの岐路に立たされました。
子会社に留まり、専門性を武器に生き残る?
それとも、親会社や外部企業への転職でキャリアを再構築する?
結局、Bさんは他社大手企業(親会社)への転職を決意しました。
子会社で培った経営企画・財務のスキルを活かし、年収も大幅にアップ。
「もっと早く外に出ていれば…」という後悔もあったものの、ようやく“天井のないフィールド”に立つことができたのです。
他社の大手企業への転職ができたのも子会社の経験があったからこそとは思っているようです。
Bさんは転職後は、子会社管理の仕事に就いているようです。
子会社側の気持ちがわかる担当者として抜擢され、自身の経験を活かして子会社プロパー社員からも信頼される仕事ぶりが評価されているようです。
これは子会社プロパー社員としての勤務の長かったBさんだからこそできる仕事です。
とはいえ、Bさんが相対するのは子会社の役員や経営企画部員。
経営企画部員は、親会社出向の人が多くメンバーの数人が子会社プロパー社員という現実…
結局、大きいグループ会社はどこの会社も人事制度は似ているものと痛感しているようです。
まとめ:子会社プロパー社員の現実とキャリア戦略は?
子会社プロパーが出世できないのは、能力不足ではなく“構造的な問題”です。
しかし、だからといってキャリアを諦める必要はありません。
子会社に残り専門性を磨く
グループ全体に貢献する目に見える成果を出す
思い切って親会社や外部企業にキャリアチェンジする
どの道を選ぶにせよ、自分の強みをどう活かすかを早めに考えることが重要です。
子会社プロパー社員というフィールドの限界を知り、主体的にキャリアを切り拓いた人だけが、後悔のない未来を掴んでいるのです。
恐らくこれからも未来永劫変わらないであろう親会社・子会社の関係性・人事制度の現実を理解し、キャリアデザインしていきましょう。