経理と経営企画は実はかなり共通点の多い職種です。
会社によって役割分担は様々であり、経理もしくは経営企画のどちらかの部署しか存在しない企業もあります。
こういった企業は経営企画と経理の仕事を兼任して行っていることが多く、どちらかと言えば規模が小さい企業がこのような組織構成になっています。
経理と経営企画のどちらにも共通することは、会社のお金を見て仕事をすることです。
どちらの職種を選んでも会計、財務、税務の知識は要求されます。
そんな類似部署だからこそ、部署間の人事異動も多かったりします。
では、経理と経営企画のどちらが良いのでしょうか。
年収、残業時間、求人数など気になる「違い」について徹底比較してみます。
経理や経営企画に転職や異動を希望している人は参考にしてみてください。
Contents
【はじめに】経理と経営企画の共通点は?それぞれの仕事内容は?
過去のお金を見るのが経理。将来のお金を見るのが経営企画。
ザックリ言うとこんな役割分担があります。
一般的には経理は既に行われた過去の取引を基に決算書を作成します。
一方で経営企画は決算資料から将来の見通しを立て、会社経営の方向性や予算編成を定めます。
経理、経営企画それぞれの具体的な仕事内容をまとめます。
■経理職の主な仕事内容
・伝票作成
・支払処理
・請求書作成
・出納管理
・決算業務
・財務諸表作成
・開示資料作成
・納税申告
・固定資産管理
・税理士、会計士との折衝
・会計監査対応
・資金計画作成
・原価計算
■経営企画職の主な仕事内容
・経営戦略立案
・中期経営計画策定
・予算編成
・M&A
・組織分掌
・経営会議・取締役会運営
・データ分析・見通し作成
・新規事業立案
・内部統制
※会社によって役割分担や仕事内容は異なります。あくまで標準的な仕事内容とお考えください。
世間的なイメージが良いのは経営企画
経営企画といえば、「社長直属のブレイン」というエリート部隊のイメージが強いでしょう。
大企業になればなるほど、経営企画は会社に選ばれた優秀な人材が集まります。
一方で経理のイメージはなかなか地味なもの。
「細かそう、暗そう、口うるさい」など地味なイメージがあるのも事実。
経理は実に難しい仕事ですが、経理事務などはパートや派遣社員も多い仕事なだけに経理=エリートというイメージは薄れます。
世間的なイメージを重視する人は、経理で実務経験を積んだ後に経営企画に異動希望を出してキャリアチェンジするのも良いでしょう。
年収相場が高いのは経営企画
サラリーマンならやっぱり気になる年収の話。同じ管理部門でも職種によって年収相場は変わります。
経理の年収レンジで最も多いゾーンは年収400万円から500万円なのに対し、経営企画は600万円から700万円というデータがあります。
このデータだけを見れば年収相場が高いのは圧倒的に経営企画ということになります。
その理由としては、以下のようなことが考えられます。
・経営企画のほうが年齢層が高い
・経営企画職を置く企業は大企業が多い
・経理の平均年収は経理事務も含まれている可能性がある
・経理職は女性比率が高めで時短勤務社員も多い
実際に求人を見ても経営企画職は年収700万円以上が多いです。
経理は実務経験、マネジメント経験、保有資格によって年収の幅が広いです。
公認会計士資格保有者は年収1,000万円越も狙えます。
出世しやすいのは経営企画
将来的な出世に有利なのは、やはり経営企画です。
昇進において強い権限を持つ社長・役員と顔を合わせて仕事をし、経営会議運営も担当する経営企画部員はアピールチャンスが沢山あります。
また、会社のトップマネジメントに助言する立場にいるだけあって将来役員になっても即戦力となりやすいのです。
一方、経理も会社にとって重要な役割を果たします。
出世するにつれて収支計画を考える能力が問われます。
この点は毎日お金の動きを見ている経理マンが最も得意な分野です。
しかし、経理は嫌われ役でもあります。
請求書や経費精算を細かくチェックして口うるさく注意したり、コストカットを指摘したりします。仕事とはいえ、昇進を決める権限のある人に嫌われてしまえば出世できません。
社内異動しやすいのは経理
一般的には経営企画職は人員数も少なく、異動希望者も多いです。
また、経営企画に異動希望する人はハイレベルかつ向上心の高い社員が多く競争が激しい傾向にあります。
もちろん、経理に異動するのも決してカンタンではありません。
会社のお金を扱う経理という部署は信頼されていない人間は絶対に異動できません。
とはいえ、希望を出し続けながら簿記の勉強をするなど努力をすれば異動希望が叶うケースも多いです。
資格が必要なのは経理
職に就くのにも、就いたあとにスキルアップする為にも資格が活きるのは経理です。
鉄板の日商簿記検定をはじめ、税理士、公認会計士、ファイナンシャルプランナー、USCPA、BATIC、ビジネス会計検定など経理の実務に活きる資格は多々あります。
これらの資格がないと経理で働けない訳ではありませんが、未経験で経理職に就く場合には事実上日商簿記はパスポートになります。
一方、経営企画には資格のイメージがありません。
社内の経営コンサルタント的な役割をすることを考えると中小企業診断士などの資格は役立ちますが、マストではありません。
未経験でも転職しやすいのは経営企画
意外にも、経営企画のほうが職種未経験でもチャレンジしやすいです。あくまでも「職種」未経験です。
他職種で結果を残した優秀なビジネスマンがチャレンジできると考えると良いでしょう。
営業、経理、企画、人事などから経営企画に転職する人も多く、採用されれば年収アップする可能性すらあります。
とはいえ、経営企画が転職しやすいわけではありません。
少数精鋭の狭き門の中、ハイレベルなライバルがポジション争いをするということは忘れないでおきましょう。
一方、経理は実務経験がなく転職するのはかなり不利になります。
ポテンシャルよりも即戦力がより重視される経理の中途採用は未経験者は圧倒的に不利になります。
経理実務経験者が採用される可能性はゼロではありませんが、年収面ではハンディキャップを背負うことでしょう。
学歴が重視されるのは経営企画
学歴社会は廃止されつつありますが、やはり会社のブレインを選ぶ際には「高学歴=頭が良い」というイメージ先行が働きます。
経営企画は会社のブレイン。会社のトップマネジメントには高学歴を置きたいと考えるのは普通です。
一方、経理も頭脳を使う仕事には変わりありません。
しかし、経理であれば専門学校や商業学校卒業で簿記を取得しているほうが役に立ちます。
高学歴であっても会計が得意かはわかりません。
経理=高学歴とは限らないのです。
女性比率が高いのは経理
これはイメージどおりでしょうが、やはり経理のほうが女性比率は多いです。
派遣社員・パート社員の経理事務に女性が多いことも理由のひとつです。
中には経理課長、経理マネージャーなど昇進する女性も沢山います。
細かな配慮や細心の注意が必要な仕事だけに女性のほうが向いている部分も多いのです。
しかし、大企業になるほど経理も男性比率が高くなります。
激務かつ高度な専門知識を必要とする為、結婚や出産可能性のある女性には厳しい環境であることも事実です。
専門知識が身につくのは経理
どちらもお金を見る専門部署ですが、知識の深さは圧倒的に経理のほうが上回ります。
より深い専門的な会計知識、税務知識が求められます。
実務経験10年以上のベテラン経理マンですらまだまだ学ぶことがあるくらい専門知識は奥深いのです。
一方で経営企画はお金だけを見る部署ではありません。
ヒト、モノ、カネ、情報など多面的に見て会社の戦略立案をする部署です。
ヒトのスペシャリストは人事、カネのスペシャリストは経理、情報のスペシャリストはシムテムです。
これらの部署と調整を取りながらはじめて戦略が出来上がるのです。
経営企画はひとつの分野の知識は浅く、その分広い知識が要求されるのです。
スペシャリストを目指すなら経理、ゼネラリストを目指すなら経営企画と考えると良いでしょう。
コミュニケーション能力が求められるのは経営企画
最もコミュニケーション能力が求められるのは営業職で、経営企画や経理のように社内でデスクワークをしている部署はコミュニケーション能力が不要と思われがちですがそれは全くの誤解です。
経営企画や経理は社内でのコミュニケーション能力が必須です。
まずは経営企画のコミュニケーションについてです。
経営戦略は一人では出来上がりません。
様々な部署と打ち合わせをし、コミュニケーションを取りながら情報収集をします。
経営企画は社内打ち合わせや会議がかなり多い部署です。
また、社長や役員といった目上の人ともコミュニケーションを取る部署です。
失礼がないよう細心の配慮をするのは勿論、裏側でコントロールするくらいのテクニックが必要です。
一方、経理は地道に一人作業をすることが多いイメージです。
しかし、経理は全社員、全部署とやり取りをする仕事です。
打ち合わせや電話でのやり取りも多く、コミュニケーションの必要な部署です。
しかしながら、経営企画よりは一人で進められる仕事も多く黙々と作業している時間は多いです。
コミュニケーション能力はどちらの部署も必要ですが、より必要性の高いのは経営企画です。
残業や休日出勤が多いのは経理
経理にとって決算を期日内に締めることは絶対です。
月末月初は激務になる上、決算期(年度、半期、四半期)はさらに激務になります。
深夜残業や休日出勤も多発します。
経理の決算業務はマスト業務だけで忙殺されます。
一方、経営企画にはルーティン業務はそう多くありません。
社長や役員からの指示で突発的な残業や、分析が長引いて残業になることはあります。
時間をかけすぎずに効率的に仕事ができる経営企画部員は残業や休日出勤が少なく調整できます。
会社にもよりますが、経理のほうが残業や休日出勤は多くなる傾向がありそうです。
非管理職の場合には、残業や休日出勤が多いということは残業代や休日出勤手当が出る分稼げるという側面もあります。
つぶしが効くのは経理
転職がしやすいつぶしの効く職種は間違いなく経理でしょう。
その理由は、経理はどの会社にも存在しますが経営企画は小規模な会社には存在しません。
経理はなくてはならない職種ですが、経営企画はなくても成り立ちます。
会社の戦略立案は社長や役員が担えば済みますから。転職市場で求人数が多いのも経理です。
経理で実務経験を3年以上積み、日商簿記や税理士等の会計資格があれば転職もしやすくなります。
会社によって仕事のルールやシステムは違えど、どこの会社の経理も似たような仕事をしているので転職しても即戦力になりやすいのです。
年収や条件に拘らなければ、少なからず食いっぱぐれないつぶしの効く職種が経理です。
経営企画は実務経験を積んだからといって、経験者が優遇されるとは限りません。
もし経営企画で人材が不足した場合、わざわざ外部の経験者を募集しなくても社内の優秀な人材を異動させる会社が多いです。
意外にも経営企画の仕事は専門知識・スキルは付きにくい為、つぶしが効くとは言い難いのです。
将来性があるのは経営企画
AIに人の仕事を奪われる時代が到来。
将来の仕事なんてわからない時代ではありますが、経理の仕事はなくなる可能性が高いです。
単純な伝票処理や税務申告はロボットに任せたほうが精度も高く低コストで済みます。
一方、経営企画の需要は年々高まりつつあります。決算書を見て会社の未来を予測し戦略を立案するのはまだまだ人間の仕事になります。
しかし、決算書がどのようにして作られているかを知っておくことは必要になります。
作り方を知らなくては将来の会社のビジョンを見通すのは難しいです。
将来性があるのは経営企画ですが、ベースには経理知識も必要だと覚えておきましょう。
ベンチャー起業しやすいのは経理?
どんなビジネスで起業においても経理の知識は役立ちます。
経理業務を外注すればコストが掛かります。
また、友人が起業したときにも創業メンバーとして声がかかるのは経理の人間です。
ビジネスアイデアを持って起業しようとしたとき、欲しいのは経営企画よりも経理でしょう。
資金繰り、会計処理、決算書作成、税務申告など経理経験者に任せたいと思う起業家は多いでしょう。
ビジネスプランの作成や組織編成など経営企画が得意とする分野は、起業家自身が行いたい仕事であり、他人にお任せすることはありません。
英語が必要なのは両方?
グローバル化時代において、英語力が必要となるのは当然です。
日系企業ではまだまだ必要性を感じないかもしれませんが、大企業から順に徐々に英語力が必要になります。
経理においては、国外取引においてやり取りをすることになります。
また、海外関連会社への決算報告なども要求されます。
経営企画においても、海外事業よりヒントを得て経営計画を立てることはマストになります。
実際に海外出張をして現地で外国人と折衝をし、ビジネスレポートをまとめるだけの英語力も必要となるでしょう。
経理、経理企画どちらの部署を目指すにしても英語の勉強をしておいたほうが良いでしょう。
【まとめ】それぞれの職種のメリットを理解してキャリアプランを立てよう!
いかがでしょうか。
これらの比較をまとめて、それぞれの職種の良い点をまとめます。
■経理のほうが良い点
・専門知識が身に付く→どの会社でも役立つ
・資格が相乗効果で実務に役立つ→一度資格を取得すれば一生モノ?
・どこでも転職できるつぶしが効くスキルが身に付く→転職で年収アップも可能
・学歴に関係なくチャレンジできる→人生逆転チャンスあり
・社内人事異動できる可能性がある→希望が叶いやすい
・女性比率が高い→管理職昇進の可能性も高い
・ベンチャー起業しやすい→起業にも必ず役立つ
■経営企画のほうが良い点
・年収相場が良い→管理部門の中でもトップクラス
・職種未経験でもチャレンジできる→ポテンシャル採用あり
・世間的にイメージが良い→響きだけでカッコイイ
・出世できるチャンスが多い→経営陣に気に入られれば昇進しやすい
・残業や休日出勤は多くない→自分自身でコントロールしやすい
・コミュニケーション能力が高まる→誰とでも接することができる
経理と経営企画は似ているけど違いがあります。
どちらもお金の知識はマストなだけに簿記の勉強は必ずしておきましょう。
オススメは経理から入り、実務経験を積みながらスペシャリストの経理を極めるかゼネラリストの経営企画を目指すのかを決めると良いでしょう。
(ライター:Nakanishi Hajime)