今、経理の転職が好調です。年収アップを狙うなら絶好のチャンスです。
転職することで年収アップできる人もいれば、残念ながらダウンしてしまう人もいます。
経理の転職で年収アップする人には他の職種とは少し違った「ある共通点」があります。
今すぐにでも経理の転職をしたい人は勿論、将来的に転職を視野に入れている人も当記事を読んで準備しておくことをオススメします。
当記事は経理職を専門とした現役キャリアカウンセラーがまとめます。
Contents
【はじめに】経理の年収相場
経理の年収相場は他の職種と比べて10%程度高いと言われています。
お金を扱う専門職である為、相応の知識やスキルが求められる経理職は平均年収が高めに設定されます。
■一般的な経理部平均年収テーブル
管理職クラス 年収600万-1,000万
財務・税務担当 年収450万-800万
会計担当 年収400万-600万
経理事務 年収300万-400万
※年収幅が大きいのは会社によって変動があるからです。
一般的には中小企業経理より大企業経理のほうが高年収な傾向があります。
また、当然のことながら人事異動で年収アップは計れません。
たとえば営業から人事異動で経理になった瞬間に年収が10%上がることはありません。
同じ会社の異動で職種が変わるからと言って年収が変わるのはおかしな話ですから。
経理実務経験を積んでから高年収の会社に転職するのが年収アップの近道です。
現職は絶対に辞めないこと
経理職は忙しいし、転職面接を行う平日はなかなか休みが取れません。
それでも、現職は絶対に辞めないでください。
何故なら、退職してから転職活動することは年収アップに繋がらないからです。
転職先の面接官の立場になって考えると、現職年収が600万円の人材に年収400万円の提示をしても入社してくれないのはわかりきっています。
しかし、退職して無職の人材には年収提示を下げることがしやすいです。
前職より低い年収を提示されても文句は言えず、高年収を狙って転職活動すれば空白期間だけが積み重なっていきます。
つまり、現職で年収600円の人材と無職で前職年収600万円の人材の転職市場価値は変わってしまうのです。
現職がある人は現職年収ベースで同等もしくは上乗せで採用してくれるケースが多いのです。
あまり大きな声では言えませんが、転職面接の時間確保が難しいなら仮病を使ってでも休むべきです。退職してから腰を添えて転職活動をするメリットもありますが、経理マンとして年収アップを目指すのなら現職は辞めないことを強くオススメします。
年収には残業代も含むことを忘れずに!
年収は残業代も含みます。求人票も残業代を含めて年収提示している場合も多いのでよく読みましょう。経理といえば激務になりやすい部署です。
しかしながら、会社によって残業時間や休日出勤数にバラつきも大きいです。
せっかく転職して年収アップしても残業時間が大きく増えては意味がありません。
転職で年収10万円アップしても残業時間が倍になっては割に合いませんよね。
時給換算すればむしろダウンしてしまいます。
残業時間目安はきちんと調べましょう。
情報がなければネットで調べたり、転職エージェントに聞いてみるのも良いでしょう。
特に「みなし残業制」のある会社は要注意です。経理でもみなし残業のある会社も多いです。
ただし、必ずしも悪いとは限りません。
「みなし残業30時間を含む」との記載があっても、実際には残業10時間程度の会社もあるようなのでよく調べておきましょう。
福利厚生もネットで調べておくこと
特に住宅手当(家賃補助)や家族手当などは重要な要素です。
手厚い福利厚生の会社への転職は年収アップに匹敵するメリットを得られる場合も多いです。
福利厚生とは従業員満足度向上、健康や生活の幸福度を向上させることを目的に従業員もしくは家族が利用できるサービスのことを指します。
ここでは福利厚生サービスの一例をご紹介します。
住宅手当(家賃補助)、社員寮、住宅ローン手当
健康診断・人間ドック、医療費補助、インフルエンザ予防接種補助、フィットネスクラブ利用補助、医療品の割引購入、医務室設置
社員食堂、ドリンク・お菓子の無料配布、社内クラブ活動、社員旅行、レクリエーション活動、社内飲み会の補助
自己啓発(セミナー・資格学校受講)補助、資格取得手当
持株会(ストックオプション)、保養所、レジャー割引、グループ会社商品割引利用
結婚・出産祝い、入学祝い、傷病見舞金
特に大企業や複数のグループ会社がある企業は福利厚生が良い傾向にあります。
歴史ある大手企業などは基本給はそれほど高くなくても福利厚生が自慢の会社も多いです。
これらの福利厚生はネット上の声を拾うこともできますので、事前にしっかりとチェックしておきましょう。
経理は実務経験が第一!担当業務の幅が広い人
まず最初に経理として転職し年収アップをするには実務経験年数が必要です。
「経理実務経験3年以上」を経過していると条件が良くなります。
実際に求人票に掲載する企業も多い為、3年はとにかく経験を積むことをオススメします。
実務経験3年未満で転職してもほぼ未経験者に近い扱いになる為、年収アップはしにくくなります。
もちろん、ただ実務経験を積めば年収アップできる訳ではありません。
転職エージェントからも転職先の面接官からも問われるのは、「経理マンとして何の業務が出来るのか」です。
業務スピードや精度について問われることはありません。たとえば、税務申告業務経験者を例に取ってみます。
■経理マンAさんの場合
面接官「税務申告業務は何が出来ますか?」
Aさん「消費税の申告業務が出来ます。精度やスピードには自身があります!」
面接官(経理は精度高いのは当たり前のことだから面接で言うことじゃないんだよなぁ。スピードは何をもって早いと言えるんだろう。それより別の税務申告は出来ないってことか…)
■経理マンBさんのケース
面接官「税務申告業務は何が出来ますか?」
Bさん「消費税、法人税、固定資産税、事業所税の税務申告を5年間担当していました。」
面接官「税務申告の経験豊富で頼もしい!即戦力だ!」
この場合、転職面接で有利なのはBさんです。
経理職の転職では担当業務の幅が広い人が有利であり、年収アップに繋がりやすいのです。
経理の実務経験年数が長い人でも業務のジョブローテーションがない会社にいる場合、担当業務に関しては精度やスピードに優れているでしょうが「経理経験年数の割に担当業務の少ない人」として転職市場価値は低いです。
積極的に担当業務拡大を立候補したり、ジョブローテーション希望をして「精度やスピードは低くても担当業務の多い経理マン」になりましょう。
浅く広く知っておけば良いのです。どんなに現職で与えられた業務を完璧にこなせても転職して会社が変われば多少なりともやり方が変わるので、はじめから完璧なんてことはあり得ないからです。
これからの経理にはマスト!英語力のある人
グローバル化が進む時代、会社の経理も英語対応できなければなりません。
海外取引、海外子会社設立、国際会計基準対応などこれからの経理には英語が必要になります。
経理経験があり、なおかつ英語の出来る人材は重宝されます。
英語力があるかないかで転職時の年収査定に影響します。転職エージェントに登録しても英語スキルについては必ず問われます。経理だからといって英語は無関係と思ってはいけません。
今のうちから英語力を高めて転職市場価値を高めましょう。
外資系企業の経理マンに転職できれば年収アップもしやすいです。
また、日本企業への転職であっても特に大手企業であれば英語力は年収アップ査定対象になります。
今からでも遅くはありません!英語の勉強をはじめましょう!
30代以降の転職なら!マネジメント経験のある人
30代以降の転職になるとマネジメント経験が問われます。
年齢が上がるにつれ、採用ポジションは管理職クラス(もしくは管理職候補)になっていきます。求人票などに具体的な年齢は書いていなくても転職先企業が求める人材の年齢イメージは予め決まっています。
経理のプレイヤーとしてのスキルは勿論、経理管理職として人を動かしてマネジメントする能力が求められます。
同時に人材育成、評価などの経験も必要です。
当然マネジメント経験のある人材は転職先でも役職者や候補として採用される為、年収査定も高くなります。
勿論、大手優良企業の経理職は管理職ではない一般社員採用でも高年収となります。
しかし、転職先企業の課長が30代の若手課長だとしたら、40代・50代の一般社員は扱いにくい為敬遠されがちです。
一般的なマネジメント経験とは具体的には課長・マネージャークラス以上となります。
役職呼称は会社によって異なりますが残業手当の出ない管理職を指します。
これは必ずしも経理のマネジメント経験でなくても他部署でも構いません。
では、マネジメント経験のない人が転職して年収アップをする為にはどうしたら良いでしょうか。
係長や主任などの役職者で部下を持っている場合にはその経験をアピールしましょう。
一般社員で部下がいない場合は、マネジメント力やリーダーシップを武器にアピールすべきではありません。
しかし、後輩社員やアルバイト、パート、派遣社員などの教育担当をしていた経験があれば転職面接で聞かれた際にアピールしましょう。
ただし、これはあくまで人材育成経験であってマネジメント経験とは別物と考えましょう。
勉強も大切!会計資格のある人
公認会計士、税理士レベル(科目合格含む)の難関資格を取得すれば、現職でも多少の資格手当を狙えるかもしれません。
しかし、それ以下の会計資格を取得しただけで直接的に年収アップすることは考えにくいです。一方で転職面接では保有資格は重要なアピール材料になり年収アップに繋げることができます。
【高評価】公認会計士、税理士、USCPA(米国公認会計士)、日商簿記1級
【中評価】EA(米国税理士)、中小企業診断士、FP1級、BATIC(コントローラーレベル)
【低評価】全経簿記上級、日商簿記2級、BATIC(アカウンティングマネージャーレベル)、TOEIC(700点以上)
低評価未満の資格のみでは年収アップには繋がらないと考えて良いでしょう。
また、日商簿記2級は転職活動する為の最低条件と考えましょう。
簿記2級がないと門前払いで応募も出来ない企業もあるので必ず取っておきましょう。
カンタンではありませんが経理実務経験のある人なら少し勉強すれば取れるはずです。
ちなみに、転職は資格より実務経験のほうが大切と言います。
もちろん経理の転職にも当てはまります。それでも経理の仕事は多職種以上に資格は評価されやすいです。転職に有利になる資格を取得してから転職活動をはじめたほうが年収アップに繋がる可能性は高いです。
経理はコミュニケーション力が大切!交渉力のある人
転職は交渉の場です。経理マンとしてどんなに素晴らしいスキルや経歴を持っていても、自分という商品を高値で売り込むスキルのある人が年収アップに繋がります。
自分を必要以上に良く見せる必要はありませんが、きちんと年収アップという形で評価してもらうようにアピールすべきです。
転職エージェントを通して企業に応募した場合、年収交渉はエージェントが代理で行います。この場合はエージェントに年収交渉をする力が必要になります。
与えられた年収を鵜呑みにせず、一度は年収アップを掛け合って貰いましょう。
経理マンは営業とは違い、通常業務でこういった交渉やセールスをする機会はなかなかないかもしれませんが、年収交渉はお金に関すること。ここだけは絶対に妥協してはいけません。
経理マンはコミュニケーション能力が必要です。
クライアントと折衝することはなくとも、社内の他部署や経営層と調整を図りながら仕事を進めていくにおいてはかなりコミュニケーション能力が必要です。
転職面接の場では履歴書や職務経歴書では見ることのできないコミュニケーション能力を見られます。
転職面接には慣れも必要です。何度か面接をしていくうちに転職面接ならではのコミュニケーション能力が高まり、年収アップにつなげることができます。
焦りは禁物!長い目で転職活動ができる人
経理という専門職転職の特徴から、中途採用募集は欠員採用が多いです。
欠員が出た際、社内の経理未経験者を育成している余裕はない為、中途採用で経理経験者を採るのは合理的判断です。
大手優良企業も長い目で見れば欠員採用をします。転職エージェントに登録し、良い求人が出るまでは様子を見ておきましょう。長い目で転職活動を考え、良い求人が出たときに最高の状態で面接に望めるよう準備しておきましょう。
経理の高年収の求人はライバルも多いです。しかも、経理職は大量募集をしないので必然的に倍率は高くなります。
つまり、「面接が通らなくても仕方ないんだ。」と割り切りましょう。
そして次の転職チャンスをじっくり待ちましょう。焦って転職しても高年収は望めません。
会計だけでは甘い!経営分析のできる人
経理業務はAI発展によりこれから益々オートメーション化していきます。
単純な会計処理業務はロボットに任せられる為、経理の仕事は縮小していきます。
そんな時代が到来しようとしている中、単純な会計処理しかできない経理部員に高年収を提示する企業はありません。
会社の数字を分析し、財務視点を用いた経営戦略の立案に携われるだけのスキルを持った経理部員は転職しても高年収を狙えます。
常に会社の数字から読み取れることを分析するクセづけをしましょう。
数字を見れば会社の動きがわかるようになる経理マンになったとき、転職でも年収アップできる人材になるでしょう。
現職が年収相場よりも低い人
さいごに、当たり前ではありますが現職で貰っている年収が相場よりも低い人は年収アップしやすいです。
転職エージェントの年収査定サービスなども利用し、自身の適正年収を把握しておきましょう。経理職の年収はスキルや経験に基づきますが、そもそも給与水準の低い会社ではどんなに昇給しても年収はたかが知れています。
また、中小企業経理よりも大企業経理のほうが年収は高い傾向にあります。
年収とは賞与も含みます。会社や業界全体の景気が悪く賞与が低水準が続いているのなら、景気の良い業界に転職するのは賢い選択です。
経理の仕事は会社はおろか業界が違っても基本は同じですぐに慣れますから。
賞与は年間で月給3-4ヶ月目程度の会社が多いです。多い会社では6ヶ月以上支給される会社もありますから、賞与支給額が低水準が続いている会社からは転職するべきです。
【まとめ】転職活動は計画的に!
以上、経理転職で年収アップする人に共通する8つの条件でした。
今すぐに転職予定がなくても、転職エージェントに登録して自身の市場価値を分析してもらい、年収目安を知っておくと良いでしょう。経理は専門職で高度な知識とスキルが必要な職種です。
同期の営業職や技術職などと同じ給与であれば転職にチャレンジしてどんどん年収を上げて豊かな生活をすべきです。
転職は計画的に行うことが大切です。年収アップできるように自分自身を成長させましょう。
(ライター:Kitagawa Mai)