退職代行。うわさには聞いたことはあったが、まさか自分の部下が退職代行を利用してバックレされるとは夢にも思っていなかった。
何故なら、退職代行はブラック企業に使うものであり辞めたいのに辞めさせてもらえない場合に使うものだと思っていたからだ。
前日まで普通に仕事をし、雑談をしていた部下。翌朝連絡なく会社に来ないので心配して連絡を待っていると、退職代行の電話があった。電話相手は弁護士を名乗る男性だった。
その後は淡々と手続きを済まされ部下本人と話すことは全くできず、退職を引き止めることも理由を聞くこともできない。部下はその後連絡を取ることもなく、出社もすることなく退職することとなった。引き継ぎをすることもなく退職されたので残された側にも多大な迷惑がかかる。
悲しさ、虚しさ、悔しさ、怒り、自責…色々な感情が入り交じるが、どうすることもできない。せめて「退職したい」とか「仕事がつらい」とか言ってくれれば、こんなに迷惑はかからないのに。
退職する側は退職代行に電話してお金を払うだけで気まずい退職交渉も面倒な引き継ぎもしなくて済むのだ。退職代行とは実に便利な制度だ。
ただし、世の中そんなに甘くはない。
退職代行バックレすれば必ず危険がある。デメリットも沢山ある。
そこで、当サイトのライター2名が共同して退職代行バックレデメリットについて語る。
Contents
退職代行業者に騙される事例も多発
きちんと調べずに勢いで退職代行業者を選ぶと騙されるケースもある。
振込をした途端連絡がつかなくなり、会社にも何も退職連絡がされていないケース。つまり詐欺に遭うこともある。
また、詐欺ではなくとも粗末な対応で残業代請求や未払給与請求などは対応してくれず、泣き寝入りする事例も多発している。
退職代行費用もかかり、次の転職活動資金がなくなることも
退職代行費用も約5万円かかる。
勿論、安価な退職代行もあるが騙されるリスクや粗末な対応になるリスクもある。
ちなみに、弁護士による退職代行の場合は5万円以上のコストは見ておいたほうが良い。
当然のことながら、自分できちんと退職手続きを行えば1円も払う必要はない。
退職代行バックレを使った場合、転職活動は長引くと思ったほうが良い。(既に次の転職先から内定をもらって退職代行を使おうとしている場合は別だが)
働いている人からすれば5万円程度は大したお金に思えないかもしれないが、無職期間は5万円は大金だ。辞めたいときは目の前のことだけで精一杯で、どれだけお金を出してでもすぐに辞めたいと思うくらい追い込まれる。その心理を上手く使うのが退職代行サービス。退職代行バックレする人間は判断力が低下している精神状態なのだ。
退職代行バックレに使う5万円、よくよく考えれば痛い出費である。冷静に考えよう。
引き継ぎ無し退職による損害賠償請求されるリスク
原則はないが、あり得ない話ではない。
引き継ぎしないまま退職代行バックレで会社をさよならし、具体的な損害を被った場合には企業側が損害賠償請求する場合もある。
こうなると、退職者側が不利。
企業側には顧問弁護士や契約している弁護士、プロフェッショナルの法務部などがいる。一方、退職者側は弁護士を立てなくてはならず、勝てるとしても費用がかかる。
損害賠償請求は怒った企業側による勝ち目のない脅しである可能性はあるが、いずれにしても面倒だ。
退職代行バックレなどせず、正々堂々と退職手続きをすればこんなトラブルも絶対に生じることはない。
最悪の場合、懲戒解雇も。
こちらも原則ないが、懲戒解雇になった場合は今後正社員として働くことは難しくなる。
懲戒解雇はサラリーマンの死刑宣告。
一度懲戒解雇を喰らえば「懲罰」欄に記載される。
企業の人事なら懲戒解雇を見抜けるし、もし懲戒解雇の過去を隠して転職した場合、バレた時には解雇される。
ここまでのリスクが1%でもある以上、通常の退職手続きをしたほうが賢明ではないだろうか。
転職活動で前職のことを聞かれた時に答えられるか。
面接での話のメイン軸は、前職の成果や退職理由だ。
まさか退職代行バックレを使ったなどとは言えないが、うまく嘘をついて面接を乗り切れるだろうか。後ろめたさがあれば、人は胸を張って前職のことを離せなくなり話題を変えようとするものだ。人事のプロフェッショナルである面接官には不信感を抱かれるだろう。
「●社のサービス、すごく良くて私もプライベートで使ってます」
「●社の●●さん、うちの会社もお世話になってるんです」
みたいな話題になったとき、胸を張って話せるだろうか。
転職活動で前職調査されるリスク
これをされてしまえば一発アウトだ。
当然、許可なく前職に電話されることはない。ただ、転職希望者の同意を得た上で前職調査される。
そこで、「前職の人には一切連絡しないで欲しい」と一点張りで伝えたら、どうだろう。不信感を与え、どこも採用してくれなくなる。
ハッキリ言って、退職代行バックレした社員に前職の人は温情の欠片もない。
「バレてしまえ」と心から願われている。前職調査に前向きに協力してくれる訳もない。
転職先の勤務地が選べなくなるリスク
職場の勤務地が被ってしまうこともあるだろう。
オフィス街というのはある程度限られている。退職代行バックレした会社と転職先の勤務地が被ることだって結構な確率であることだ。複数の事業所や店舗を持つある程度の規模の会社であれば尚更だ。
たとえば、こんなケースだってある。
前職は東京駅勤務。
次の転職先は東京駅勤務の会社はすべて候補から外し、無事に新宿勤務の企業に転職成功。前職は新宿エリアには事業所なしの為、偶然会うリスクはなし。
しかし、1年後に前職の本社が新宿の近くのビルに移転。昼休みには多くの前職の顔見知りとランチが被る。怯えながら毎日仕事するも、噂で退職代行バックレしたことがバレてしまう。
転職先のクライアントだったら?社内に前職の人が転職してきたら?
次の転職先で関わりを持つ可能性もある。
クライアントだった場合は最悪だ。
退職代行バックレを使った前職では、噂になって悪い意味で有名人になっているだろう。会社の信頼を落とすことにもなりかねない。
転職先と前職で何らかの関わりがあった場合はすぐにバレてしまい、転職先での評価や信頼は完全に失墜する。
たとえ転職先と前職で関わりがなかった場合も安心はできない。
新規クライアントになる可能性もあれば、転職先にあとから前職の同僚が転職する可能性だってある。怯えながらこの先仕事をすることになるだろう。
そもそも、転職先と前職で関わりのない企業に転職するということは、異業界や異職種へ転職するということだ。年収などの条件も下がる可能性が高い。
「そういえば●さん、前職A社でしたよね?今度当社でスタートする新商品の参考にしたいから誰かにヒアリングしてほしい」
みたいなことを上司に言われたら、何と言う?退職代行バックレをした人に協力してくれる社員はいない。
転職先の上司にも不信感を与えてしまう。
退職代行バックレに慣れてしまうリスク
「今回だけ」と思って退職代行バックレをしても、人は一度便利なサービスを使えば慣れてしまうもの。
心理は犯罪と同じだ。必ず繰り返す。
もし退職代行バックレを使ってバレずに転職成功したとしても、次の職場でも嫌なことがあればすぐ逃げるように退職代行バックレを繰り返してしまうリスクがある。
繰り返せば繰り返すほど、逃げるように生きていかなくてはならない。
職歴、キャリアも何も身につかず、どんどん転職活動は不利になる。
仕事とは大変なほどやり甲斐があるもの。逃げる楽さに慣れてしまっては、絶対に成功しない。
辞めたいなら正々堂々辞める手続きを取ること。これが面倒だったり気まずかったりするほど、逃げる癖はつかない。
前職の人に遭遇する夢を見ることも…
まるで指名手配犯のような気分になるようだ。
それはどこか後ろめたさを引きずるからだ。退職代行バックレをされた前職の同僚、上司は絶対にあなたを許さない。
どこかで偶然見かけたら制裁を加えるくらいに思っている人もいるだろう。
余程強いメンタルを持っていない限り、悪夢を何度も見て苦しむはず。
おそらく、退職代行バックレをする人は面と向かって退職ができなかった弱いメンタルの持ち主。
しばらくの間、悪夢に苦しみ眠れない夜を過ごすことになる。
やはり、人としてのモラルを疑う
退職代行バックレしたことを胸を張って他人に話せるかを基準に行動すべし。
自分の子どもや孫に退職代行バックレの話ができるだろうか。
自分の行動に対して誇れるだろうか。
迷惑をかけて退職代行バックレをしたことに、心を痛めないだろうか。
いくら退職代行バックレで楽に退職できたとしても、人としてのモラルに反する行為は決して良くない。
ただし、ブラック企業なら退職代行バックレはアリ!
「辞めたいのに辞めさせてくれない」ブラック企業なら退職代行を使うのはありだ。
もちろんこれは最終手段。
上司、その上司、人事など様々な部署に退職希望を伝えても辞めさせてもらえない場合には退職代行を使うのもありだ。
しかし、デメリットのほうが多いので基本的には退職代行を使わない方法を模索し続けよう。
【まとめ】退職代行バックレはやめておこう。
デメリットが大きすぎて見合わない。
ここで紹介したデメリットやリスクを回収できるだけ退職代行バックレにメリットはない。
・退職代行業者に騙される
・退職代行費用で生活苦になる
・損害賠償請求される
・懲戒解雇になる
・転職面接でうまく答えられない
・前職調査される
・転職先でバレてしまう
・転職先を選びにくくなる
・退職代行バックレで逃げることに慣れてしまう
退職代行バックレなどせず、正々堂々と退職したいと自分の口で伝えるべき。
迷惑をかけたり気まずい思いをするかもしれない。
でも、今では転職は当たり前の世の中。
余程ブラック企業でない限り退職を無理に引き止めたり、嫌がらせをすることはない。皆、応援してくれる。
ましてや前職と良い関係を続けることで次の仕事にポジティブな影響をもたらしてくれることもあるだろう。
とにかく、勢いだけで退職代行は使わず将来のあらゆるリスクを冷静に見極めて最善の行動をしよう。
(ライターKitagawa Mai、Nakanishi Hajime)