日商簿記コラム

日商簿記1級が役立つのはこんな人。当てはまらなければただの無駄。

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難関資格で有名な日商簿記1級。ハイレベルな受験者の中、合格率は10%程度・勉強時間目安は600時間・多い人では1,000時間以上と言われます。
勿論、難関資格だけに合格できれば凄いことは間違いないのですが…合格のメリットを享受できるのは一部の人だけです。当てはまらない人にとっては日商簿記1級合格は「凄い」だけで役に立たない無駄な努力となってしまいます。

当記事を書く私は、日商簿記1級を合格して経理職に転職しました。明らかに日商簿記1級資格が役立ったと思っています。それでは、どんな人が日商簿記1級資格が役立つのかを書き綴ります。

会計関連職で一生食べていきたい人

これ、大前提です。そして超重要です。

会計関連職(明確な定義はありません)とは、経理、財務、税務、経営企画、内部監査などのお金に関わる仕事のこと。
日商簿記1級は会計のエキスパート資格です。お金に関わる仕事をしなければ役立ちません。膨大な勉強時間はハッキリ言って無駄になりますし、「一生会計の仕事をしていく」という強い覚悟がない限りは不合格続きになることでしょう。
中途半端な覚悟で合格できるレベルの資格ではありません。生活における大部分を日商簿記の1級の勉強に費やすことになります。
睡眠時間や遊び時間を削ってでも勉強し続けるモチベーションを維持するには相当な決意が必要です。

また、どんなに優秀で頭の回転が早い人でも、日商簿記1級レベルの難題はどこかでつまずきます。
非常に複雑かつ膨大な会計論点でパニックになり、挫折してしまう人も沢山います。そんな瞬間に「私は一生会計職として頑張っていくんだ!」という強い意志があれば乗り越えられるものです。

資格学校のパンフレットなどでは、「営業職でもコスト感覚が身についたり他社の財務諸表を読む力が身について役立つ」とか「管理職なら数字を読む上で必須」などの謳い文句で日商簿記1級の必要性を多方面からアピールしていますが、これは資格学校のプロモーションです。
勿論、営業職や管理職でもコスト感覚や数字分析は必要ですが、日商簿記1級までのエキスパートになる必要はありません。
完全にオーバースペックです。日商簿記2級があれば十分でしょう。会計関連職以外が日商簿記1級は宝の持ち腐れです。

経理実務経験3年以上の人

難関資格に見合うだけの実務経験は必要です。

たとえば、日商簿記1級資格を武器に経理職で転職活動をしようとしたとき。経理実務経験が1年しかないのに、日商簿記1級の武器を振りかざしてもアンバランスです。「実務を知らずに知識だけ立派な人」は評価されません。

経理実務経験3年以上とはいえ、まだまだ経理マンとしては半人前です。しかし、決算業務・財務・管理会計など全体像が見えてくる頃です。
このタイミングでの日商簿記1級取得は、転職活動や昇進などに大きなプラス効果が働きます。

経理経験を3年積みましたが、知識不足を感じました。連結会計や税効果会計など、より難易度の高い経理業務に携わる為に日商簿記1級を取得しました。

これは自身の経験から課題(知識不足)を見出し、目標に向けた努力をした素晴らしい行動パターンです。
経理マンが日商簿記1級に合格すれば、かなりの箔が付きます。世間的にも「日商簿記1級合格者」はスゴイことで、自慢できるでしょう。

経理実務経験3年以上になればある程度の仕訳イメージもつくようになるため、日商簿記1級のような難解な論点もスムーズに頭に入るようになります。
巷でも日商簿記1級は難しいと言われますが、ある程度の経理経験がある人からすればそこまで難しくはありません。

大企業経理で連結会計に携わる人

日商簿記1級資格が役立つのは大企業の経理職です。 

中小企業では簡便的な経理処理しか行わない為、日商簿記2級レベルの会計がわかれば十分に対応できます。(決して中小企業経理のほうが仕事が簡単という訳ではありません。経理担当の人数も少ない傾向にある為、すべてを理解しなくてはならない難しさもあります)

日商簿記1級では連結会計を学びます。
子会社や関連会社(グループ会社)を持つような大企業では有効です。
大企業経理マンとしてさらなるスキルアップの為に日商簿記1級を取得する人も多いです。

中小企業経理で経験を積み、日商簿記1級取得してから転職活動を行い大企業経理を狙う手もあります。
年収アップや待遇アップにも繋がります。

メーカー経理など原価計算を行う人

日商簿記1級では原価計算を重点的に学習します。

反対に、実務で原価計算を行わない会社の経理職の人にとっては日商簿記1級の工原(工業簿記、原価計算)は役立ちません。つまり、日商簿記1級で学んだ知識の半分は無駄になるということです。
メーカー経理の転職においても原価計算実務経験は重視されます。経験がない場合には日商簿記1級資格取得することによって知識面でキャッチアップすることが可能です。
業界にもよりますが、一般的にメーカーはホワイトな企業が多いとも言います。自社でモノを作っているという強みがある為、ヒット商品さえ持っていれば安泰です。経理においても過度な残業が発生したり、休日出勤だらけにならないような風潮があります。

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経理職の転職で年収アップを目指す人

経理職が年収アップする最短手段は転職することです。

他職種と違い、経理はどの会社でも仕事内容が似ている為に即戦力として中途採用しやすいのが特徴です。そして、企業が中途採用で優秀な経理マンを採用する為には前職より年収アップ提示をする必要があります。

同じ会社にいても年収アップする可能性はありますが、経理職のように会社の売上に直結しない部署の場合には急な昇給やボーナスは期待できず、地道に少しずつ年収を上げるしかないのです。
ただし、その年収の上げ幅は会社の給与規定によって決まっています。どんなに優秀であり、昇進したとしても限度はあります。
日商簿記1級資格は間違いなく履歴書・職務経歴書で光ります。日商簿記2級は何の輝きもありません。
資格取得によって大企業経理等に転職するのは賢明な選択です。

中小企業の経理課長クラス(残業代つかず、深夜残業や休日出勤あり)よりも大企業経理平社員(残業代全額支給。決算期以外は残業は多くなく、有給取得も推進されている)のほうが年収が高いなんてこともあるあるです。それくらい「どの会社で働いているか」は重要なことなのです。

税理士受験を目指す人

日商簿記1級は税理士受験資格を得ることができます。

将来的に税理士になって独立開業して年収1,000万超え…そんなストーリーを描く人にとってはオススメです。
また、日商簿記1級は税理士や公認会計士試験の登竜門試験とも言われます。さらに難関資格の腕試しとして受験するのは有効手段と言えます。

経営コンサルタントへ転身したい人

日商簿記1級とコンサルタント職は相性が良いです。

その理由は、経営コンサルティングにおいて会計数字を読むことは必須スキルだからです。コンサルタントに転職する際には日商簿記1級レベルの確かな会計知識は大きな武器になるでしょう。
コンサルタントとして独立開業するのであれば、名刺に載せられない日商簿記1級よりも税理士や公認会計士を目指すべきですが。

当てはまれば日商簿記1級にチャレンジ!

難関資格だけに、日商簿記1級合格には相当な勉強時間とお金を費やします。

仮に日商簿記1級合格までの勉強時間600時間を時給1,000円で換算すると60万円。資格学校費用や受験費用等でおよそ15万円。
日商簿記1級資格取得には正味75万円を費やすこととなります。
自分自身にとって75万円以上の価値を感じることができれば受験すべきですが、「高い」と感じたら受験は検討しましょう。

時間もお金もかかる資格だからこそ、合格後は必ず役立てないと勿体ないのです。当記事で紹介した人物像として当てはまる人は是非とも日商簿記1級にチャレンジしてみましょう。間違いなく、一生モノの価値ある資格となるでしょう。
(ライター:Takahashi Shuta)