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はじめに:大手経理からベンチャーに転職した私の“後悔”ストーリー
「もっとスピード感のある環境で成長したい」 「裁量のある仕事がしたい」
そんな思いで、大手メーカーの経理からベンチャー企業の経理へ転職した私。
入社前はワクワクしていましたが、現実はまるで違っていました。
正直、大手企業でバリバリ経理の仕事をした経験から、ベンチャーの経理なんて楽勝だと思っていました…
この記事では、私が実際に体験した“ベンチャー経理の厳しい現実”と、“後悔の理由”を率直にお伝えします。
大手企業の経理とベンチャー経理の違いを痛感した瞬間
大手企業の経理は、明確な分業制の中で自分の担当領域を突き詰めるスタイル。 一方で、ベンチャー企業では「なんでも屋」的な働き方が求められます。 経理と総務の垣根が曖昧で、気づけば備品発注や給与計算、時には社長のスケジュール調整まで…。
最初は「幅広く経験できるのは良いこと」と思っていましたが、次第に本来やりたかった会計スキルを磨く時間が取れないことに気づき、焦りが募りました。
マニュアルや規定が整備されていないベンチャー経理はリスクも沢山
ベンチャー企業の経理で一番苦労したのが、「マニュアルがない」ことでした。
大手企業の働き方はマニュアルや規定がすべて。マニュアルがない世界はあり得ないと思っていたが、ベンチャーの現実に驚きました…
前任者がいない、もしくは属人的に処理していたため、引き継ぎ資料も存在しない。
経費処理ひとつ取っても「前回どうやったか」がわからず、毎回手探りで対応する日々。
さらに、社内規定や承認フローも未整備なことが多く、
「この支払は誰の決裁が必要?」「契約書ってどこに保管されてる?」という質問が絶えません。
その結果、税務調査や監査でリスクを指摘されることもあり、
「自分の判断がそのまま会社のリスクになる」というプレッシャーを感じ続けました。
経理としての責任感は強まるものの、精神的な負担もかなり大きかったです。
「仕組みがない」ことで毎日がトラブル対応の日々に
大手企業では、経理ルールやチェックフロー、承認経路などがすべて整備されていました。 しかしベンチャーでは、“経理ルール”という概念そのものが存在しないケースも珍しくありません。
「この支払ってどう処理する?」「経費精算は誰が承認?」といった質問が日常茶飯事。
正解がないまま進めるしかなく、結果的に属人化とミスが増え、毎日のようにトラブルに追われました。
特に、監査対応や決算期になると、これまでのルールの曖昧さが一気に表面化します。
「なぜこの処理をしたの?」と聞かれても、「当時の判断で…」としか答えられない。
これは経理として本当に辛い瞬間でした。
社長の一言で会計方針が変わる。経理の意見は通らない現実
ベンチャーでは、意思決定のスピードが速いのが魅力と聞いていました。
しかし、実際は社長の気分次第で会計方針が変わることも。
「この費用は資産にして」「やっぱり経費でいいや」など、突然の指示変更に右往左往。
いくら社長の意向であっても、経理としては駄目なものは駄目と言わないと会社も自分自身も守ることはできません。リスクの塊なのです。
経理として正しい処理を提案しても、
「細かいこと言わなくていいから!」と一蹴されることもあり、
“正確さよりスピード”が優先される世界にストレスを感じました。
「成長できる」はずが、むしろキャリアが停滞する不安
ベンチャー経理は“スピード感がある”と言われますが、 実際は“整備されていない環境での対応力”が問われる場面が多く、会計の専門性を深める時間が取れにくいのが現実です。
また、大手企業のように教育に投資もしてくれないので、仕事中に会計セミナーや研修に出席したり、会社の福利厚生で資格取得をすることなどもベンチャーでは難しいです。
特に、月次・四半期・年次決算を体系的に学びたい人にとっては、
「勉強にならない」「正しいやり方がわからない」と感じることも少なくありません。
結果的に、「経理としての市場価値が上がらないのでは?」という不安が大きくなっていきました。
ベンチャー経理の給与・待遇面は“努力では報われにくい”
ベンチャー企業は資金繰りが厳しいケースも多く、 経理の給与水準も大手時代より年収で100万円以上下がることがありました。
また、昇給制度や評価基準も曖昧で、
「がんばっても数字に反映されない」「結局、社長の気分次第」という不透明さが、精神的に堪えました。
「責任だけ重くて、給与は上がらない」——
しかもこの先会社がどうなるのか不安で堪らない、給与が上がるのか下がるのかすらわからない…
これが、転職後に最も後悔したポイントです。
体験談:ベンチャー転職で得た唯一の“学び”
正直、後悔は大きかったですが、得たものもありました。
それは、「経理の仕事を仕組みから考える力」です。
経理体制をゼロから構築する経験は、大手ではなかなかできない。
これはベンチャー経理ならではの仕事の面白さ・やりがいがあります。
もし再び転職するなら、この経験を活かして「経理企画」「経営管理」など、
より上流のポジションを狙いたいと思えるようになりました。
ベンチャー企業の経理は、大企業とはまったく別の仕事環境です。
私自身、大手企業から転職したときに最初に感じたのは、「決まった正解がない」ということでした。
それは同時に、自由度が高いという魅力でもあります。
ベンチャー経理に向いている人はこんな人
では、どんな人がベンチャー経理に向いているのでしょうか?
- 自分で考え、判断し、動ける人
ルールが整備されていない分、「これでいいのかな?」と迷う場面が多く発生します。
そんなとき、いちいち誰かの指示を待つタイプだと苦しくなってしまいます。
逆に「こうやってみよう」と自分で試行錯誤できるタイプは活躍しやすいです。 - 経営層と距離が近い環境を楽しめる人
経営判断に関わる数字を扱う機会が多く、「自分の意見が経営に反映される」瞬間を体感できます。
スピード感を持って仕事を進めたい人にとっては、非常に刺激的な環境です「安定志向」や「ワークライフバランス重視」の人には正直あまり向きません。
会社の成長段階では制度が未整備なことも多く、突発的な業務も頻発します。
そのため、変化を楽しめる柔軟さがあるかどうかがカギです。
まとめ:転職する前に“覚悟”と“目的”を明確に
大手経理からベンチャー経理への転職は、 「成長できる」と思って飛び込む人ほどギャップに苦しむ傾向があります。
ただし、「仕組みづくりを経験したい」「将来CFOを目指したい」など、
明確な目的を持っていれば、得るものも確実にあります。
転職は“環境を変える手段”であり、自分のキャリア軸を見失わないことが一番大切です。

