会社のお金を任される経理。どんな会社にも必ずと言っていいほど存在する経理ですが、その仕事の実態については他部署からはわからないことが多いです。
当記事は元経理職の現役キャリアカウンセラーが執筆します。
ホワイト経理とブラック経理の特徴を知っておきましょう。
そして、ブラック経理に勤めない為の転職先の見極め方までお伝えします。
Contents
【はじめに】経理の離職率は高い?低い?
ホワイト・ブラックを判定するひとつの指標として挙げられるのが離職率です。
残念ながら経理職のみの離職率データは取得できませんでした。
営業や製造などのライン系職種と比較すると専門職である経理は離職率は低いです。
経理として実務経験を積めば他社経理への転職も容易な為、たとえ離職してもまた別会社で経理として働くケースが多いです。
つまり、ブラック経理の場合は離職して別会社の経理に転職するケースが多いということです。優秀かつ懸命な選択ができる経理マンはホワイト経理に集まるのです。
同じ経理の仕事をするなら現状に満足せず、よりホワイトな会社に勤めるべきです。
残業少なく年収高い!ホワイト経理の実態
まずは当記事で紹介する「ホワイト経理」の特徴についてまとめます。
・年収500万円以上で他職種よりも年収高め
・決算期や月末月初は残業があるものの他は定時上がり
・残業代は必ず支給される
・決算期など休日出勤した場合には平日代休を取得できる
・閑散期は経理部員が交代で有給を取る
・繁忙期でも月の残業時間は45時間以内
・会社からは残業しないように徹底的に指示される
・コンプライアンスに関する教育が徹底される
・マニュアルがしっかりと用意され、定期的に更新されている
・支払処理や税金計算などは何重にもチェック機能があり、万が一ミスが起きた場合は上が責任を負う
・わからないことに関しては顧問税理士や会計士のサポートがある
・「正しい決算」をする為に厳しく指導される
・人員不足の場合は補充される
・持ち帰り仕事は一切ない
・経理知識習得の為に会社費用でセミナー受講や資格取得ができる
・日商簿記1級などの会計資格に合格した場合は表彰や資格手当がある
・離職率が低く経理メンバーが何年も動かないことが会社の課題
ホワイト経理でも残業時間や休日出勤が多い会社はあります。
それは「不正をしない正しい決算を行う為」の仕方ない残業であり、会社としては不用意に経理部員に残業させようとはしません。
残業代も正しく支給される分、年収も高めになる傾向があります。
経理はお金という会社経営にとって大切なものを扱う部署だけに、激務傾向になるのは仕方ないかもしれません。
休日出勤・サービス残業当たり前!ブラック経理の実態
一方で「ブラック経理」の実態はホワイトとはかなり差があります。
・内勤事務職の経理なのに「みなし残業制」
・深夜残業・休日出勤が恒常化していて経理部員は疲れきっている
・日頃のストレスから部内の空気はピリピリ
・経理部員同士が仲が悪い
・サービス残業や持ち帰り仕事が当たり前に発生している
・チェック機能がない。もしくは弱い
・ミスした場合には叱責やマイナス評価だけでなく罰則対象となる
・給与ベースが低く、昇給が小さい
・離職率が高く、引継ぎ体制がない
・マニュアルが整っていない
・利益を良く見せる為の粉飾決算に加担しなくてはならない
・納税額を減らす為に利益操作が行われている
・監査前になると慌てて準備しなくてはならない
・書類が煩雑に置かれていている。コンプライアンス管理ができていない
・ジョブローテーションがなく職務の幅が広がりにくい
・知識習得の為のセミナーや資格取得は自費
・閑散期でも業務の代わりがいない為、有給取得できない
・営業マンも無理なノルマに追われている
当てはまればブラック経理です。
ブラック経理が離職率が高いの理由は、経理は他の企業への転職がしやすいことにもあります。
他社でも同じような経理業務をしているにも関わらず、あえてブラック経理でサービス残業をする必要はないのです。
ただ仕事がツライだけならまだしも、粉飾決算や脱税に関わってしまえば、会社や上司の指示であろうと責任を負うことになります。
こうなってからでは遅いです…自分は絶対に不正に加担しないと思っていても、長くブラック企業の経理をしていれば感覚も麻痺してしまいます…
ホワイト経理とブラック経理の見極め方
それでは、どのようにしてホワイト経理とブラック経理を見極めたら良いのかを書き綴ります。
会社規模と創立年数
ハッキリ言って大企業・有名企業のほうがホワイト経理の可能性はグンと高くなります。
コンプライアンス経営が重視される時代において、大企業はとにかく不正会計をしないよう努めます。
大企業経理は報告書類も多く取引先も多いので激務になりがちですが、会社も人材補充・派遣雇用・システム入替・代休取得促進などそれなりのバックアップをしてくれる為、ホワイトです。
ただし、大企業経理は人気なので入社ハードルは必然的に高くなります。
実務経験の幅を広げる、会計資格取得、英語の勉強など大企業転職に有利になるよう自身の市場価値を高めましょう。
ホームページをチェック
まずはホームページを見ることで会社の状況が見えてきます。
明らかにホームページのデザインがナンセンスだったり、古いページが更新されていなかったり、誤字脱字などが目立つ場合はブラック企業の可能性ありです。
このご時世、ホームページは会社の顔となって取引先の信頼や入社希望者が応募を決める大切なものです。
マトモな会社であればホームページを改修し、信頼を得るはずです。
ブラック企業はホームページ改修にかける資金不足もしくはワンマン社長の方針で古いままのホームページにしている可能性があります。
収益の推移をチェック
会社ホームページや四季報などの情報から収益が伸びているのかをチェックしましょう。
この辺の見方は経理マンの得意分野ですよね。
収益は堅調に伸びているのがベストです。
これが収益が急激に伸びている場合、体制が追いつかずに激務ブラック状態に陥る場合もあります。
逆に収益が落ちている場合は最悪です。
人件費をかけられない為にサービス残業が蔓延したり、少しでも損益を良く見せる為に経理が粉飾決算などに加担することもあります。もちろん、収益が落ちていても積極的に投資したり新規事業に参入している場合にはホワイトなのでしっかりと中身を見ていきましょう。
グループ会社があるか
大手グループなら割と安心です。
親会社がホワイト企業なら子会社・グループ会社もホワイトな可能性が高まります。
グループ会社は運命共同体なので、1つでもブラック企業の噂が立てばグループ全体のイメージダウンになる為、コンプライアンス対策を徹底しています。
また、グループ会社があればワンマン社長にはなりません。
資本提携だけのグループ会社を持つ会社もありますが、一時的な買収の可能性もあります。
「三菱●●」、「伊藤忠●●」など親会社の名前がついたグループ会社のほうがホワイト企業の可能性が高いです。
求人票は要チェック
経理はどこの会社にも存在する為、聞いたことのない社名の求人もあります。
社名だけではホワイト・ブラック見極めは難しいです。
最初のチェックポイントとして、未経験者でも応募できるか否かです。
経理の中途採用は即戦力経験者が基本です。
もちろん、経理未経験者を中途でポテンシャル採用して育てる企業もあるようですが、かなり稀なケースです。
ブラック企業は未経験者を積極採用します。単純作業を過酷に押し付け、辞めてしまえばまた次を募集するのです。
経理のような専門職で年中採用をかけている会社はブラックの可能性大です。
平均年齢も見ておきましょう。
あまりに平均年齢が若い会社は離職率が高いブラック企業の可能性があります。
人がどんどん動くということは出世できる可能性が高いというメリットもあります。
しかし、普通に考えてホワイト企業は退職者が出ない為、平均年齢は高くなる傾向にあります。
ネットでの評判
ネット上のクチコミは参考になります。
ホームページには出ないような情報が溢れています。
年収、残業時間、休日出勤、福利厚生など特に数字で表せる情報は信憑性が高いです。
ピンポイントで経理の情報が出るとは限りませんが他職種の情報も参考になります。
注意すべきはネット上のクチコミは退職者からの情報が多いので偏りがあります。
退職者は何らかの理由で会社を去った人なので不満が大きかった可能性があります。
ホワイト・ブラック判定!転職面接で質問すべきこと
どれだけ調べても判定しにくい場合は転職面接の質問も使えます。
もちろん、ストレートには質問しにくいはずなので下記のような質問を用いてホワイト・ブラック判定をしましょう。
これからの御社の経理のビジョンは?
経理としてビジョンを持ち、前進している会社はホワイトです。
たとえば、以下のような回答が来るはずです。
・グローバル化対応
・会計システム改修
・資金調達手段の多様化
・業務改善による残業削減
逆に、特にビジョンを持たない会社はブラック経理です。
日々業務に追われて前進する余裕がなく、単純作業で忙殺されます。
マトモな会社なら経理のような管理部門であっても目標設定をしているはずです。
中途採用のきっかけは?
採用理由が前任者の離職なのか組織拡大なのかは重要です。
組織拡大の為の経理部員採用であればホワイトです。
また、これから会社の成長と共に年収アップやボーナスアップも考えられます。
もちろん、前任者退職だからといってブラックとは限りません。
むしろこちらのケースのほうが多いでしょう。
「前任の経理が突然辞めてしまい、すぐにでも働いて欲しい」などと言う場合はブラックでしょう。
具体的にどんな仕事を任せてもらえる?
経理といっても仕事の幅は広いです。
入社後に具体的にどんな仕事を任せてもらえるのかは明確にしておきましょう。
きちんとした会社であれば、採用にあたりどんな仕事を任せるのかは計画しているはずです。同時にジョブローテーションをしているかも質問しておきましょう。
ジョブローテーションせずに一部の経理業務だけを続けることとなり、スキルアップができません。次の転職も難しくなるでしょう。
【さいごに】ブラック経理は人生を棒に振る
同じ経理職、同じ知識・スキルであっても会社によってホワイト・ブラックはハッキリと出ます。ブラック企業に勤めてしまうと大切な人生を棒に振ることになります。
経理の転職はしっかりと会社を見極めて慎重に決めましょう。
是非ともホワイト経理を目指しましょう。
(ライター:Kitagawa Mai)